月永レオという奇跡

唐突だが、皆は墓場ジャンルを決めているだろうか。
私は決めている。

ensemble-stars.jp

ソシャゲ好きのオタクなら半分以上の人間が知っている、もしくは耳にしたことがあるのではないだろうか。
そう、めちゃくちゃ絵が上手いジャンルである。
私はあんさんぶるスターズ!を、世界で一番絵が上手いと思っている。
あんさんぶるスターズ!は、シナリオがいいとか、キャラ属性がいいとか言われているが、結局は『絵が上手い』
ここに落ち着くと私は思う。まずはこれを見てほしい。

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先日五歳を迎えた運営が赤ちゃんだという点を覗けば女性向けのソシャゲでナンバーワンだと言ってもいい。
批判がある人間は「思い込んでいる」と見てくれて構わない。貴方のジャンルが貴方にとってのナンバーワンだから。

本題。
本日。私の墓地ことあんさんぶるスターズで、ひとりのアイドルが誕生日を迎えました。
『月永レオ』さんです。沼ったばかりで未読ストーリーが多く、己の解釈すら定まっていないころは「レオくん」や「月永」、はたまた「月永レオ」とフルネームで呼んでいたが、ここ数年は「月永さん」呼びに落ち着いている。
ここからは私がだらだらと月永さんへの感謝の気持ちを綴っていく。感謝というかもう自分語りしかしてない。むしろ私が忘れたくないから記録としてここに残しているだけ。
同担及び他担、そもそも私の推しを知らないよ~って人はこのブログが毒にも薬にもならないことを念頭に置いてほしい。


推しとの出会い
あんさんぶるスターズ!をインストールしたのは、当時仲が良かった子に勧められたのがきっかけだった。キャスト欄に私が好きな緑川光さんがいること、そのキャラが格好いいことを力説してくれた。

ソシャゲ初心者な私は流されるまま彼女の指導の下チュートリアルを終わらせて、それから三ヶ月くらい放置した。メインストーリーも読まなかった。
理由はシンプルに、他のことに目を向ける余裕が全くなかったからだった。毎日の勉強と、部活動と、家の問題でだいぶ参っていた。
三ヶ月経って、進めてくれた子に話題を振られ、アプリを起動した。

全く触れていなかったものだからアップロードの時間がとても長く、これは触っていないことがバレてしまうと思った。彼女も多分気づいていたと思う。それでも普通に、私にもわかる内容で言葉のキャッチボールをしてくれたのは、彼女の人徳故だと感じた。
自分が勧めたものに全く興味がないってわかったら悲しいもんね。

まず、彼女の推し(三カ月経ってようやく決まったらしい)を見るため教室に行った。衣更真緒を見て、素直に「うわ、顔がいいな」と思った。というか、全員顔はよかった。
一年から三年まで順に巡った。

あんさんぶるスターズ!の脳内知識が「人が多いソシャゲ」から「顔のいい男がいっぱい」にアップデートされた瞬間である。

そして推しとの初コンタクトだった。三年B組の教室を覗いた時に、「あ、この子いい」って思った。
オリジナルで男を一人と描けと言われたら黒髪短髪眼鏡医学部進学予定のいけ好かないインテリ男(これは鳳鏡夜のせい)を描く私が、髪色が明るく、肩より長い髪を軽く結んでいる彼に、惹かれてしまったのだ。

所属している部活動が一緒だったことに少しだけ親近感を抱きながら、マイルームに設置した。
彼女が「それは最近でてきたキャラだね」と言った。
触ってみると楽しそうに笑い、かと思えば、不機嫌そうにこちらを睨んできたりした。少し面白かった。

もしかして、あんさんぶるスターズって面白いのでは?でも沼ってる時間がないんだよな~とアプリを閉じて、一年弱が経った。
彼をマイルームに設置した日から、一年弱私はアプリを開かなかった。
興味がなかったわけではない。本当に時間がなかったのだ。正確に言えば、これが火曜サスペンス劇場ならとっくに刺殺されていたであろう両親が常に身近にいたので余裕がなかった。この間に(冗談だけど)家燃やしても罪に問われないのでは?と考え始める。そんなことはない。

部活や勉強に励み、心身が疲れ切って寝る場所が玄関でも仕方がないと思い込み、大好きなセーラー服を着て大好きじゃない高校に通う日々。クラスに顔がめちゃくちゃ可愛い女がいなかったらとっくに正気を失っていたかもしれない。

ちぐはぐな毎日に心が全く追いついていないのに時間は一定の速度で訪れるから精神のバランスは崩れ始め、それなのにどこか私の心は穏やかだった。

八月十三日。その日は今までの人生で一番気持ちのいい起床だった。思い立ったが吉日!と、うっきうきで姉の化粧下地を盗んで友達から貰ったリップを塗り、登校時間に私服で電車に乗った。乗りながら、やっぱ死ぬなら派手に一発で決めようと考えた。

山手線の人が多そうな駅で降りてアニメイトに行き、でもこれから死ぬしな、じゃあ買っても意味ないじゃん!?と慌てて逃げだしショッピングモールへ行き、綺麗な店員にお似合いですと言われたお洋服を断り切れずに購入。一人じゃ絶対に行かないであろうカフェで朝ご飯を食べながら死に方を考えた。

まず先端恐怖症なので刺殺は無理。絞殺は東京に来た意味がないので選択肢から排除。助かって中途半端に生き残るのが一番きつい。そもそも痛いのが苦手なので、やっぱり物理でドーン!と、一瞬が潔いと思った。今振り返ると、後にも先にも死にたいって思ったのはこの時が初めてだった。

都会は電車がよく通る。三分に一回、どれだけ待っても五分に一回。だから椅子にずっと座って、隣に誰かが立つ度に、今ここで私が飛び降りしたらどんな顔するんだろう、待ち合わせとかしてるのかな、それ全部台無しになればいいなって考えていた。

いや本気で考えていたことだから今考えてみるとドン引き案件。もちろん今は反省してるし自殺する予定もありません。

でもね、人間どん底だとなにもできない。人の迷惑とか考えられない。私服が綺麗なお姉さんが隣に立った時なんて、形容し難い理不尽さというか怒りが湧いてきて、すごく惨めになった。これからデートに行くのかなとか、恋愛が絡んでなくても、自分を着飾れるだけの強さと精神力が妬ましかった。だからこの人が隣に立った時、少しだけ飛び降りようって気持ちが冷めた。だって本当にデートだったら切ないし。

私みたいに不幸な子がいるから彼女みたいに幸せな子が生きていけるって考えたら、ふざけるなって思うけど、でもあと数分くらいは不幸でいてあげよう、と思ってあげたり。

それで六時間ぐらい駅のホームでぼーっとしてた。人ってなにもしないで六時間ぼーっとできるんだなと思った。苦痛も何もなかった。頭だけじゃなく時間の感覚も狂ってたのかもしれない。飲まず食わずでくらくらもしてた。

その時既に、あんさんぶるスターズ!がリリースされてから、1年が経っていた。

私は認識という言葉を、顔や性別ではなく、「名前と人物が一致する」という意味で解釈している。
だから私は、彼のことを知ってはいたけれど、彼という人間をはっきりと見つめ、認識したのはこの日になる。
たまたまTwitterのTLに流れてきただけだった。
誰かは知らないけれど相互がRTした気がする。
彼の新規カードを見て、驚いてしまった。
びっくりするくらい、格好よかった。

 

見ればわかると思うが、一枚目の橙色の髪が「月永レオ」さんだ。
「なんかいいな」と思った彼の新規カードのリプ欄にはたくさんの感謝と感動、そして感激の言葉で溢れていた。
スクロールし「この人はたくさんの人に愛されている」と思いながら、再び彼のカードへ目を向けた。絵を描かない私でも、作画コストの高さが伺えた。このソシャゲは絵が上手だと前から評判だったが、確かにその通りだ。当然、彼のカードも素晴らしかった。
息を呑むって、このことだと思った。
どこか漠然と、けれど本気で抱いていた自殺願望が、身体の外へ出ていってしまった。というか死んでる場合ではなかった。

彼のことを、知りたいと思い、ならば向かう先はひとつ。コンビニで『魔法のカード』と呼ばれるものを買った。初めての課金だった。

帰りの電車でpixivを読み、衣更真緒推しの女に「推しになるかもしれない」と月永さんの画像を送ったら「遅いわ」と返信が。

「一年前からいたよ?」いや知ってるし!!!!でもたぶん、今日だから好きになったんだと思う。別の日、別のイラストだったら好きになってなかった気がする。それはロビンフッド以前の絵柄に魅力がないのではなく、いつでも命を捨てられた時間に出会ってしまったからだ。

月永さんは後の推しであり『命の恩人』だし、そもそも推しに命を救われることって、なかなかないと思う。
それから数日後。
〇×連目にやっと来てくれた一枚は、今でもずっと大事にすると決めている。

 

初めての推しは死ぬほど格好良かった


十月二十九日。私は豊洲PITの前で三回吐きそうになっていた。




原因は私のバーチャルライブの記憶が「極上!めちゃモテ委員長」や「きらりん☆レボリューション」から全くアップデートされていないところにある(これはCGらしいが)

上書きもなしに現地に来て、開場時間が迫ったら恐怖のあまり泣き出すのも無理はないだろう。雨だったから近くのショッピングモールに避難していたが、衣更真緒の女と延々「大丈夫?」「もう無理かも」と言い合っていた。

彼女は腹痛の薬を飲み腹を下して一時間の間に五回お手洗いへ行った。自分より不健康な人間を見るとちょっと大丈夫な気もしてきて、いややっぱり無理だろと冷静になるが手汗は止まらず常に顔面蒼白だった。同じく顔面蒼白になって帰ってきた彼女は私を指さして笑った三分後にお手洗いへ戻っていった。

周りのオタクは全員笑顔だったから、私たちだけ行先間違えてるのか?死地に赴くのか?と不安がよぎった。

けれどそんなわけなく開始時間は近づいていく。整理番号のおかげでなんとか真ん中の場所を確保。一年経てばKnightsの姫としての覚悟もできあがっていたので(月永さんはKnightsという騎士道ユニットのリーダーを務めていらっしゃいます)誰よりも私が姫だという謎の自信だけを胸に抱いた。

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トリスタが登場。ここで『これ、もしかして普通のバーチャルじゃない?』と怖くなる。そしてダンスうまっ!振り付けよっ!顔綺麗!とか考えてたらあっという間にナイツの出番。

この時何考えてたかはよく覚えてない。ただ、やっと会えた。そう思った。ずっと泣いてたと思う。この日のためにと準備したアイシャドウもマスカラもぜーんぶ落ちて視界ぐちゃぐちゃだったけど、ずっと月永さんだけを見ていた。

これまでなんども彼の顔、仕草、台詞を見ては「好きだな」と思っていたけれど、そんなのは序の口だ。
だって”本物”がそこにいた。どうしよう?ダンスのキレが良くて、ターンも綺麗で、ウインクのタイミングもばっちりで。私が好きになった”アイドル月永レオ”は、世界で一番格好良かった。
帰り道、衣更真緒の女に「月永、せないずの肩に触ってたな」と言われた。現実逃避していた事実に一気に頭が痛くなった。

 

推しの好きな食べ物
私が彼の好物を知ったのは、出会って三年半経った日のことだった。
アニメの放送記念として、毎日ひとりづつキャラクターを紹介し、簡単なプロフィールとキャラクター本人の自己紹介をツイートする企画があった。

簡単なプロフィールの中には「好きな食べ物」も記載されていた。三年半経って、推しの好物が知れる。なんと嬉しいことか。追憶後(モノクロのチェックメイトで検索!)毎日食べていた主食のプリンはカウントしていない。

毎日18時を過ぎるとそわそわした。私はその公式アカウントをフォローしていたし、なにかツイートをしたら通知が来るよう設定を弄っていたけれど、それでも毎日そわそわしていた。
18時を過ぎる。10分経つ。20分が経った。
公式がツイートをする。文字を読む前に、キャラクターが目に入る。
その度に、推しじゃないことを知っては、落胆し、喜んだ。寿命が延びた思いだった。
そうしてまた、彼の好きな食べ物を考える一日が始まる。

彼の好物はなんだろう。(これがプリンならば、興奮と同様でリスカをしていたかもしれない)
7月1日18時40分。
推し好きな食べ物は珈琲だった。

 

飲み物じゃん!!!!!!!!と落胆したが、もしこれがシュールストレミングだったら主食がそればかりで近所から苦情がでるのでそう考えるとほっとした。

電車を途中で降りてとりあえずインスタントコーヒーを買った。家に帰って飲んだら苦すぎて舌が虚無になった。珈琲なんて子供の頃に飲んで無理!と拒否して以来だから合わないのなんて当たり前だが。そもそも月永さんが『コーヒーが好き』なのか『コーヒーに含まれているカフェイン』が好きなのかは一生の課題だ。しかし『手っ取り早くカフェインを摂取でき尚且つ味が嫌いではないコーヒー』を好んで呑む月永さんは、なかなか格好いいのではないだろうか?

口癖が「うっちゃ~☆」で自由奔放ですぐ行方不明になって作曲の天才で常に笑顔の彼が、雑誌のインタビューなどで「好きな食べ物は?」に「珈琲」と答える。その時の表情、仕草、目線、どれも想像だが想像の中の事実だけであと五年は生きていけるなと思った。

それから私は、ずっと珈琲を飲んでいる。最初は砂糖やミルクが必要だったけど、今はブラックでも難なく飲み干せるようになった。人間の進化である。他にも私は炭酸や紅茶が苦手だが、月永さんが好き!って言ったら毎日飲むと思う。月永さんはお前に飲んでほしいと思ってないけどな。
それでも構わない。
これは一種の洗脳だ。
多分私がこの先10年、20年歳をとっても。
この日のことを憶えてる。それでも少しずつ忘れてしまうんだと思う。
初めてコーヒーを買ったお店も、最寄り駅も、近くの棚にあったからなんとなく買ったお菓子も、今は全部覚えてるけど、年を重ねたら、きっといつかは忘れてしまう。
だけど。
50歳、60歳になって、認知症になっても、私は珈琲を飲む度に、彼のことを思いだして泣きたい。
その感情に「寂しい」という名前をつけたい。
月永さんに会ってから、嫌いだった珈琲が飲めるようになりました。痩せて、ぼろぼろだった爪は綺麗になって、お化粧にも気を遣うようになりました。
世界の色が変わりました。

だから最後に。
月永さんへ。
出会ってくれてありがとう。
あなたは、どうしようもない私の前に不意に現れて、私の人生のすべてを変えてくれました。
無邪気で、子供のような明るさと純粋さをもっていて、キラキラしていて、可愛らしくて、でも、それ以上に、どうしようもなく格好いい。
あなたの姿を目にする度に、私の中で「格好いい」という言葉の定義が定まっていく。
ただひたすらに、あなたを愛おしいと思う。

どうかあなたのこの先の人生が、美しく華やかで、幸福でありますように。
あなたが幸せでいてくれますように。
あなたの幸せを、それだけを、ただひたすらに、私は願っています。

おまけ
いつか「アイドル月永レオ」の解釈を纏めたいけどすごく長くなる+ガッチガチだから大変そう。
私情抜きではっきりと読みやすいブログ、死ぬまでに作りたいですね。